「Solitude – Loneliness and Freedom」は、孤独、孤立隔絶、そして自発的にな社会からの距離を取る隠遁というをテーマとしてを探求する革新的な芸術プロジェクトです。これは、中央アジアおよび東アジア各地のゲーテ・インスティトゥートが主導する2年間の取り組みの一環であり、アジア地域とドイツのアーティストやキュレーターが、パフォーマンスや展覧会からトークイベントに至るまで多様な形式を通じ用いて、国際的な言説空間この世論において重要性を増すテーマに新たな視点を提供します。各地での作品は、異なる背景を持つ観客が積極的に参加し、自らの経験を振り返り共有する機会を与えます。本プロジェクトは、孤独を個人的な体験としてだけでなく、より広い社会的・文化的現象として可視化し、このグローバルな現実の複雑さを捉える新しい美的表現を創出することを目指しています。
本プロジェクトは、2026年夏にベルリンでの合共同発表をもって締めくくられます。劇場 HAU Hebbel am Ufer との協力により開催されるフェスティバルは、各国で制作された内容から選ばれた作品でからフェスティバルが構成されます。
東京で開催中のSOLITUDE『安堵と静寂』は、2000年代初頭から実験的サウンドアートの分野に深く関わってきたキュレーター兼プロデューサーのマイク・クーベックによってキュレーションされました。このプロジェクトは、社会から離れ「一人になる」ことには、豊かな体験が宿る可能性があるのではないかという問いがを探求することが出発点となっています。。
「安堵と静寂」は「孤独」の利福を探る展覧会、ライブコンサート体験、パフォーマンスを展開し、「孤独」のもつ創造的可能性を探りますする。様々なジャンルの独立したインディペンデントアーティストが、五感を刺激し身体意識を目覚めさせるような遊び心ある発見に導く作品を発表します。する。純粋に知的なアプローチではなく、孤独を直感的で芸術的なアプローチに美的探求を通じて提示することで、私たちは孤独・沈黙、・退却そして隠遁の重要性についてより深く理解する契機を目指しています。
–––
個の受容、そして場の変容についての雑感 ── <SOLITUDE『安堵と静寂』>開催に寄せて
文:倉持政晴(区区往来)
「スーパー・デラックス」は2002年から2019年まで東京都港区の西麻布に存在したオルタナティブスペースだった。
音楽、映像、演劇、ダンス、美術などそれぞれ異なるアートフォームにあわせて場内レイアウトを柔軟に変更することができ、200人以上の観客を収容することができたスーパー・デラックスは、大資本におもねることなく自身の創作活動に取り組み続けているインディペンデントなアーティストたちのライブ・パフォーマンスや作品の受け皿として、都内では希少な場所だった。コミュニティの細分化に伴って求められる受け皿のサイズが縮小されていった結果、独立系文化のネットワーク形成に関わってきた人びとでさえも無数に点在するそれぞれの小さな現場の内部へと分散していったかのようにみえる世界各国の都市部の現況を思えば、なおのこと。スーパー・デラックスは、国内外の即興演奏/実験音楽/オルタナティブロック/フリージャズ/現代音楽への造詣が深くパフォーミングアーツの動向にも目を光らせていたマイク・クベック氏のディレクションによって、表現のアウトプット方法が異なるアーティスト同士が出会い、ジャンル越境的なコラボレーションが起こりやすい場所でもあったからだ。
クベック氏は今もなお、千葉の南房総地域を拠点としながら〝場の創造〟をめぐるプロセスの只中に身を置いている。2022年9月に鴨川市で始まった「スーパーナチュラルデラックス」は、以前よりこの地域でパーマカルチャーを実践してきた本間フィル・キャッシュマン氏との共同事業として運営されている。この〝スーパーナチュラルデラックス〟という呼称は、明治時代に建てられた茅葺き屋根の母屋と二つの蔵と庭がある敷地全体を指す名前であるのと同時に、この場所で自主企画として開催されるライブイベントが「SuperDeluxe presents: SupernaturalDeluxe Vol.○○」とナンバリングされていることから、スーパー・デラックスが現在進行形でプロデュースしているプロジェクトの名前でもあることが窺える。訪れるたびに少しずつ姿を変えているスーパーナチュラルデラックスという場そのものが、舞台作品でいうところの〝ワークインプログレス〟なのかもしれない。
さて、今回ゲーテ・インスティトゥート東京で開催される<SOLITUDE『安堵と静寂』>は、世界各国で国際文化交流機関としての施設運営と企画を展開するゲーテ・インスティトゥートが、中央アジアと東アジアとドイツの各都市のコラボレーターとともに企画し、各地で開催してきたアートプロジェクト<SOLITUDE>の東京編ということになる。Solitude(孤独、孤立)というテーマが掲げられたこの国際的なプロジェクトにおいて東京でのディレクションを担ったスーパー・デラックスは、一人のアーティストによるパフォーマンス、一人(または一組)のアーティストが制作する作品のそれぞれに光を当てるという方法を選んだ。6日間の会期中には、ゲーテ・インスティトゥート東京の館内をフル活用して5つのライブパフォーマンスと8つの展示が行われることとなる。
日本のオルタナティブ音楽史におけるアイコンとしての確固たる存在感を今なお強めている灰野敬二、Phew、山本精一といった音楽家たち。マージナルコンソートのメンバーでサウンド・アーティストの多田正美。そして美術のフィールドで国際的な活動を展開する毛利悠子、鈴木ヒラク。彼らは西麻布スーパー・デラックスという一遍の物語の中で重要な役割をそれぞれに演じた登場人物たちでもある。だからといって今回の<SOLITUDE『安堵と静寂』>がかつてのスーパー・デラックスを回顧するための機会ではないことは、スーパーナチュラルデラックス以降にクベック氏が手がけてきた実験の成果がほどよくブレンドされているラインナップをみれば明らかだろう。
フルート奏者の山本英はクベック氏が南房総地域で出会った才能溢れる若手音楽家の一人で、今年5月に南青山の銕仙会能楽研修所で自ら企画したソロ公演では、スーパー・デラックスで最後の日本公演を行ったアルヴィン・ルシエのスコアを含む7つの現代曲を演奏している。映像作家の斉藤玲児は、同じく今年5月に銀座の空きビル地下階を舞台にMODEとスーパー・デラックスの共同キュレーションにより開催されたイベントに参加したアーティストの一人で、過去作と近作で構成された自身の映像作品を上映した。モビール作家のShinobu Hashimotoは、先ごろスーパーナチュラルデラックスの蔵と母屋と敷地全体を使ってインスタレーション作品「流転」を制作・発表したばかりだが、時間という概念を可視化するための装置のような彼の作品群は都市空間との間にどのような相互作用をもたらすのだろう。
西麻布スーパー・デラックスと鴨川スーパーナチュラルデラックスの双方でパフォーマンスを行い、西麻布の記憶と鴨川の今を繋ぎ止める蝶番のような役割を担うようになったアーティストたちもいる。舞踏家の工藤丈輝は今年5月に鴨川で二日間にわたり開催された「Konnekt」にて国内外/地域内外の音楽家たちとのセッションを行っており、VJ&コラージュアートユニットonnacodomoはスーパーナチュラルデラックスの名物マーケット「Super夜市」のフライヤーデザインを手がけつつ出店者としても常連となっている。珍しいキノコ舞踊団の創立メンバーであるダンサーのクベック雅子と布などを用いた作品制作やインスタレーション行うパットによるユニット「Doku Raku」にいたっては南房総地域を現在の拠点としている。
<SOLITUDE『安堵と静寂』>は、一つの土地に縛られることなく創意が宿る場と機会の創出を求めてコンセプトの拡張を行い始めたスーパー・デラックスの最新形態として、私たちの前に立ち現れることになるだろう。加速度的に風景と価値観の画一化が進む大都市の空洞化が独立系文化の領域にさえ影響を及ぼすようになった昨今において、まるで1曲の長さが年単位という壮大なロングミックスであるかのようなドローニッシュな静寂を内包する空間の中に敢えて立ち止まり、個々のパフォーマンスを目撃し、作品と対峙する──そのような構造をともなって。
インディペンデントという創作の態度とその実践には孤独がつきまとうものだが、そもそも私たち人間は自然界から疎外された孤独な存在ではなかったか。ゆえに私たちは集まり、何かを作り続けてきた生き物なのではなかったか。つまり今回の場は、あなたが個として社会と関わり続けるための一つの提案として、用意されている。懐かしくも新しいかたちの器をまた作り直すために。それぞれの〝いるべき場所〟を今一度見つめ直すために。
–––
SOLITUDE『安堵と静寂』
開催概要
期間:2025年12月2日(火)-7日(日)
時間:10:00-20:00
料金:入場無料
場所:ゲーテ・インスティトゥート東京 (東京都港区赤坂7-5-56)
ソロパフォーマンスシリーズ
SOLITUDE『安堵と静寂』の一環として、実験的なアーティストによるソロパフォーマンスのシリーズを開催します。
12月5日 (金) 灰野敬二|山本英 ➡【Tickets】
12月6日 (土) Phew|工藤丈輝 ➡【Tickets】
12月7日 (日) 山本精一「スイミンショウ」 ➡【Tickets】
SOLITUDE オフィシャルウエブサイト(ゲーテ・インスティトゥート東京)